昨今の、特に都市近郊におけるお墓の不足に伴う墓地・墓石の価格高騰に、僧侶の一人として心を痛めておりました。
私たちには必ず死が訪れます。この世で精いっぱい生きてこられた方のおとむらいやご供養がおろそかにされてよいはずがないと思います。そのことに苦しんでおられるご遺族もいらっしゃいましょう。
長泉寺ではそうしたお悩みを抱えていらっしゃる方のお力になれればと考え、墓地の無料供与の申し出をさせていただいてまいりました。
その一方で、お墓の継承者がいらっしゃらない方、ご自身の人生を全うされた満足感から供養は不要、残された家族に経済的負担をかけたくないという方の声も届くようになってまいりました。人生を自由に生き「死んだら土に還りたい」という想いもまた、美しい四季を感じながら生きる日本人特有の死生観かもしれません。
お骨に私たちの意思が残るわけではありませんが、そのかわり魂は自由になり、残された人の心のなかでも生き続けます。そして、生きている方にとって、祈りを形にすることは大事と考えます。形を整えることで、お気持ちもまたふさわしい形に整えられていくものと思います。結ばれたご縁をないがしろにしないためにも、きちんとお骨を収めていただくことが大事と心得ます。故人を偲び、哀しみを癒し、時々にうれしいこと、つらいことを報告し心静かに語る場としても大切な空間となることでしょう。
お一人おひとりそれぞれの人生があり、そうしたすべての大切な想いに寄り添いたい、ただそれだけを願っております。幸い私の想いにご賛同下さった方の御厚志をいただき、多くの皆様のご要望にお応えできる準備が整いつつあります。それぞれに安心して収まれる場所を整え、いま生きている方々の心の拠り所をご提供させていただくことが、僧侶としての私の務めと思っております。
合 掌
曹洞宗 大用山 長泉寺
住職 閑野 徳満